SSブログ

決戦??明石vs舞鶴 [学校の旅行]

近畿7高専によって行われる高専体育大会。その柔道競技が行われる朝、僕とS君は舞鶴市内から試合会場である舞鶴高専に向かうため二人でバスを待っていた。個人戦に出場するYdさんが体調を崩し昨夜診察を受けた。結果たいしたことはなかったのだが、翌日薬を取りにきてくださいとのこと。医院が開くのを待っていては試合に間に合わない恐れがあるので、おまけでついて来ていた僕たちが、薬を貰いに行っていたのだ。バス停横の歩道に腰を下ろしてぼーっとしていると、S君に「なに旅行気分になっとんど。」いわれた。たしかにそうだった。この時の明石のメンバーは充実していた。団体戦で全国2連覇を果たした主要メンバーがそのまま残っており、レギュラー5人を含む5年生7人は最高の状態にあった。近畿では楽勝、全国でもまず大丈夫だろうというのが大方の見方だった。そんな中で試合にからむ可能性のまずない僕は、まさに旅行気分だった。

試合は各チーム5人による点取り試合で行われる。まず全7チームが3チームと4チームに分かれてのリーグ戦を行い、そこから各上位2チームが決勝トーナメント戦に進む。そして、その優勝チームが仙台での全国大会に出場となる。遅れて到着した僕たちが軽く体を動かし終わったころ予選リーグが始まった。突然僕は「舞鶴との試合に出ろ」と言われた。少し緊張はしたが僕は負けても四勝一敗まあべっちょないやろ、と言う気分だった。実際試合は明石の圧勝に終わった。

その後も順調に勝ちつづけ、決勝戦は地元舞鶴との試合になった。予選リーグで僕が出た試合の相手。決勝戦進出というので、舞鶴の学生が集まって来ていたが、地元の有利さというのを考えても、明石の圧倒的有利は変わらないように思えた。試合開始前のメンバー表交換が終わり発表を聞いた時、僕はおやっと思った。これまでずっと中堅、大将に置いて来たポイントゲッター二人が先鋒、次鋒に入っていた。なんでかな、不思議だったが、まあ大勢に影響はないことに思えた。まもなく先鋒のSさんが試合を始めた。大学生も含めた県の学生選手権を制したこともある、一番のポイントゲッターである。早いうちに勝負を決めてしまうつもりかな?旅行気分濃厚な僕の気持ちはもう仙台に飛んでいた。

「一本!」の声が響く。畳に背中を着けていたのは意外にもSさんだった。沸き返る舞鶴応援団とは逆に明石は少し動揺はしていた。次峰Mさんはゴールデンボーイともいわれた選手。普通なら安心して見ていられる試合である。ところが、Mさんの体が宙に舞った。「一本」主審の声が舞鶴選手の勝利を告げる。「うそっ」呟きがもれた。舞鶴応援団は勢いづいていた。周りがすべて舞鶴を応援する中、僕等も声を出しつづけた。しかし、声を出しつつも頭の中は普通ではなかった。「これは夢や。こんなことがほんまにあるはずがない。目が覚めたらすっきり仙台行き決定なんや。」

もうあとがない状態で試合に望む中堅はFさん。その風貌と同じく鋭く攻撃的な柔道をする。追い詰められた状況であっても、実力を出せなくなるようなタイプとは思えない。大丈夫、けど不安は残る。ぼんやりした意識のなか応援を続ける僕の目に、試合場の一番離れた所で一瞬Fさんが浮いたのが見えた。息を呑む。「いやまだや、一本ちゃう。」これでFさん本来の動きが戻ったのか。「一本」今度は明石の勝利だった。

副将Yrさんは安定度では一番である少なくともここで終わることはないだろう。奇妙な雰囲気もだんだん普段どうりになって来ていた。結果は順当なものだった。これで2-2になって大将戦、いつもは先鋒で切り込み役を努めるOさんがここにいる。相手は奇しくもOさんの中学の同級生だった。試合前Oさんは「立技なら相手が、寝技なら自分が上だった」そういったそうだ。お互い相手を分っているだけにぎりぎりの駆け引きの中試合が進む。そして、一瞬の間合いで舞鶴の選手の足払いが飛んだ。スローモーションのような流れの中Oさんの足がそれをかわす。そして、相手の足を追いかけ、追いつき、捕らえた。Oさんの足が舞鶴の選手を払う。相手の体が崩れ畳に落ちる。「寝技に!いや一本や!」主審の手が真っ直ぐ上に挙がっていた。

「よっしゃあー終わった。」長い試合だった。疲れた。けど終わってみれば楽しかったかも知れない。その日はずっと、なにかどきどきしながら試合結果を思いかえしていた。

*注)この話は全くの個人的観点によるものであり、また記憶を頼りに書いているので事実と異なる場合があります。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。